Beauty and Gallery hana*輪さんにて開催中の、切ってみま蝶REALに参加させていただいています。


今日は、出展している作品について、解説を載せたいと思います。
今回私は、カイコガをモチーフに切りました。

カイコは、成虫になると口を持たず、また翅があっても飛べません。
仮に幼虫の段階で野生の中で生きようとしても、体が白くて狙われやすく、しかも木に掴まる肢の力がなく、ぽとっと落っこちてしまうようです。
ですので、人間の管理なしに生き永らえることが決して出来ない体のつくりになっています。

***
カイコの少女達は幼虫の頃、そんなことつゆ知らず、空を飛ぶお姉さん蝶達を見て「自分達も大きくなったらきっとみんな仲良くあんな風に空を飛ぶのだ」と憧れます。
影織の切り絵「憧憬」
「憧憬」
仲良しの少女達、実は髪飾りが一人ずつ違うんですね。
同じように見えて、実は個体を識別できます。
影織の切り絵「憧憬」(一部)
アルファベットみたいなモチーフです
***
空に憧れた少女達。
しかし現実はとても残酷です。

一番左の少女は、冬虫夏草として使われるために、
影織の切り絵「冬虫夏草」
「冬虫夏草」

真ん中の少女は生糸を作るために、そもそも成虫になることすら叶いません。
影織の切り絵「蚕蛾(繭)」
「蚕蛾(繭)」

最後に一番右の少女は成虫になれますが、自分が空を飛べず、長く生きる事も叶わない、生殖のための存在と知るのです。
影織の切り絵「蚕蛾(成虫)」
「蚕蛾(成虫)」

彼女たちの眠る黒い標本箱は、一人一人遺影をイメージして黒く作りました。

***
あらためて、幼虫の頃の姿を見てみてください。
そして一番右のカイコと、残り二人の胸のあたりのハートのようなマークを見比べてください。
影織の切り絵「憧憬」(一部)

一番右のカイコだけ、ハートの真ん中に小さなダイヤの印が入っています。
彼女たちの知らぬうちに幼虫の頃から、「成虫に育てられるもの」と「生糸や薬のために使われるもの」として、実は既に選別されていたのです。

***
さて、作品の脇に、このような詩も併せて置いています。
影織の切り絵作品文章
「生糸」「生薬」「(次世代の)生命」と、「生」を作り出すために、彼女たちは死を求められるけれど、夢の中で空を飛び、星まで自由に翔けることができたらいいな、という思いをこめました。

決してハッピーな物語ではないけれど、そこに救いがあればいいなと思うのです。

***
会期は17日までです。お近く在住の方、是非いらしてください!
12日午後、在郎予定です。